コラム記事:茨城大学 教授 田中 光太郎
- コラム

2020.03.23

コラム記事:茨城大学 教授 田中 光太郎

コラム記事:茨城大学 教授 田中 光太郎

氏名 : 田中 光太郎

所属 : 茨城大学大学院理工学研究科工学野機械システム工学専攻

 

 

 

コラム

自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)のホームページのリニューアルに伴いできたコラムに記事を書かせていただいていることを感謝申し上げます.現在の大気環境を考えると,二酸化炭素の削減,PM2.5(粒子状物質)の削減,対流圏オゾンの削減という3つの大きな課題があります.内燃機関は,その3つの問題に寄与する排ガスを排出する一見「厄介な」産物です.しかし,それが社会発展の一助になったことも事実であり,この先も内燃機関を利用する社会は続くと考えられます.今こそ,内燃機関を取り巻く3つの大きな問題点に関してエンジン研究者だけでなく,「様々な分野」の研究者が協力し,内燃機関を上手に利用した社会の実現に向け,研究を継続していかなければなりません.

 

 AICEはそのような状況の中で発足した組合です.この組合ができたが故に,内燃機関を取り巻く共通の困りごとに,共同で,本気で,取り組む形ができつつあります.これまで話すことのなかった企業の研究者間の接点,共通の目標は持つものの,共同で研究をすることの少なかった国内の大学間連携,また大学と企業との密なコミュニケーションが生まれています.特に,排ガス浄化に重要な高度な排ガス浄化システムの構築には,触媒の知見と熱流体の知見を融合することが重要ですが,この組織の発足とともに,それらを実現する機械系の研究者と化学系の研究者の融合も生まれています.自分はAICE研究で,まさに機械と化学の融合の真っただ中の研究に携わっており,EGRデポジットの堆積メカニズムの解明,尿素からのアンモニア生成を含んだSCRFの劣化モデルの構築,アッシュ生成メカニズムの解明,貴金属触媒のライトオフ劣化モデル構築など,超難題ですが,不思議で謎を解きたいと思える面白さを兼ね備えた問題に,化学系の先生,機械系の先生とともに取り組んでいます.もちろん,これまで進めてきた燃料の自着火に関する研究でも超希薄域のノック研究に展開しています.燃焼においても,排ガス浄化においても,機械と化学の接点で成果を出していければと考えており,日々努力を続けています.

 

これまで接することのなかった研究者間,組織間の連携が生まれ,情報交換ができるAICEは,企業の皆様が新しいコネクションを作る場としても非常に有効ですし,また,大学が企業のニーズを知る上でも有効で,研究活動を活発化させる重要な場であると思います.また,大学の研究では,学生が推進する場面も多々あり,AICEの研究に携わることで,直接企業の皆様と学生が接点を持つことが比較的容易になりました.それにより,自分の研究が何に役立つのか,単に学術的な面だけでなく,その活用の場を認識しながら進められることは貴重な機会であり,学生の教育にも役立っています.これは「即戦力」を育てる場にもなっているということで,内燃機関に関連する研究を実施する若手を育てる場としても有効と思われます.ただし,修士の学生までは,十分に研究遂行能力がない場合が多く,研究の推進には,博士課程の学生,ポスドク,助教といった若手研究者を育てることが重要です.特に社会人が博士課程に入学することも出来ますので,産学連携を人の交流も含めて行うという意味で,企業から大学へ博士課程学生としての人材の投入も活発になるといいのではないかと考えます.

 

最後に,軌道に乗り始めたAICEの活動を,継続発展させられるように,研究を実施する大学研究者として,いい成果が出せるよう,これまで以上に努力してまいりたいと思います.そして,ますますAICEが発展していくことを祈ります.AICEの活動を通して,我々の研究室は,多大なご支援、ご指導をしていただいております.深く感謝いたします.どうぞ引き続きのご指導ご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます.

 

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