AICEとは

理事長挨拶

自動車用内燃機関技術研究組合 理事長 山中 章弘

自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)は、研究の水平分業が浸透している欧米の開発スタイルを参考に、共通課題に対して、共同で出資して基礎・応用研究を行う「国内の研究プラットフォーム」の役割を担って、2014年4月に設立されました。AICEの理念として、「日本の産業力の永続的な向上に貢献」、「将来に亘り産学官連携を推進するリーダの育成」を掲げ、組合員は日本の自動車メーカー9社と研究機関2団体からなり、共同研究企業は約70社に上ります。さらにアカデミアによって設立された「ゼロエミッションモビリティパワーソース研究コンソーシアム(ZEMコンソ)」にも参加し、産産学学連携での研究を推進しています。

AICE発足後は、産学官連携により経済産業省の補助事業「クリーンディーゼルエンジン技術の高度化に関する研究開発」や「次世代自動車等の開発加速化に係るシミュレーション基盤構築事業」の実施およびSIP「革新的燃焼技術」の目標達成への協力などで、大きな成果を創出してきました。その後、各国からカーボンニュートラル(CN)宣言が出され、電動化、特に電気自動車への期待とシフトが叫ばれるようになり、AICEではCNに向けた技術シナリオを策定し、研究を進めています。

CNの目的はCO2の排出ゼロ化であり、電気自動車を100%にすることでも、内燃機関車両を廃止することでもありません。各国によって経済発展やエネルギーの事情が異なることからも、幅広く多様な技術によってその実現を図る必要があると考えています。

2022年には、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募する「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」にAICEが採択され、これを機に、内燃機関搭載車のCN実現に向けた「燃料利用技術の向上に係る技術開発」を加速していきます。

激しく変化する社会動向や産学の期待値を踏まえ、将来のAICEの姿としては、「これまで培った産学連携の継続」、「内燃機関に加え、電動車やCN技術に至るテーマの拡大」、「従来の基礎応用研究に加え、より製品化に繋がる成果」 等を目指し、世界をリードする日本の技術力の強化と次世代をリードする人材の育成、そして日本の産業技術の発展に貢献して参ります。

自動車用内燃機関技術研究組合 理事長 山中 章弘

組合概要

名称 自動車用内燃機関技術研究組合
The Research association of Automotive Internal Combustion Engines
略称:AICE(アイス)
住所 〒105-0003
東京都港区西新橋二丁目8番11号 7東洋海事ビル5階
設立年月日 平成26年4月1日
理事長 山中 章弘(トヨタ自動車株式会社 パワートレーンカンパニー 先行技術開発 担当 Chief Project Leader)
組合員

いすゞ自動車株式会社、スズキ株式会社、株式会社SUBARU、ダイハツ工業株式会社、トヨタ自動車株式会社、日産自動車株式会社、本田技研工業株式会社、マツダ株式会社、三菱自動車工業株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所、一般財団法人日本自動車研究所

(9企業2団体)

従業員数 16名
事業の概要 内燃機関の性能向上技術の基礎・応用研究
研究スローガン 地球にやさしい内燃機関 究極の熱効率、ゼロエミッションに向かって
主な事業

AICEは、研究事業、MBD事業、ベンチマーク事業、調査事業の4つの事業を行っております。

設立時から2つの理念を追求し、産業界のニーズや課題を官の支援を受けて、大学に研究していただく研究形態の礎ができました。AICEの活動は、産学連携によるオープンイノベーション活動の1つとして広く認知されつつあります。
研究事業を通じて、産産、産学、学学のネットワーク構築、若手研究者の育成を目指しています。

理念

  •  産学官の英知を結集し、将来に亘り有望な動力源の1つである内燃機関の基盤技術を強化し、
    世界をリードする日本の産業力の永続的な向上に貢献する。
  •  産学官の相互啓発による研究推進により、日本の内燃機関に関する専門技術力の向上を図り、
    技術者 および将来に亘り産学官連携を推進するリーダーを育成する。

組織図

組織図

役員一覧

役 職 氏 名 所属先及び役職
理事長 山中 章弘 トヨタ自動車株式会社
パワートレーンカンパニー 先行技術開発 担当 Chief Project Leader
専務理事 土屋 賢次 一般財団法人日本自動車研究所
業務執行理事
理事 飯田 訓正 学校法人慶應義塾
名誉教授
理事 生浪島 俊一 日産自動車株式会社
パワートレイン・EV技術開発本部 アライアンスグローバルVP、理事
理事 新里 智則 本田技研工業株式会社
エグゼクティブチーフエンジニア
理事 人見 光夫 マツダ株式会社
シニアイノベーションフェロー
監事 緒方 廣己

※2024年2月1日現在

カーボンニュートラル実現に向けたAICEの役割

世界の動き

AICEが実施した2022年度動向調査結果※1を読み解くと、2040年にかけて世界の乗用車普及を二分している先進国とその他途上国のパワートレインの地域性の実態が見えてきました。その内容を少しご紹介します。

※1 AICE参加企業に配布される技術動向調査報告書

2040年の社会を想像します。我々が頻繁に目にする「日・米・欧・中」の地域では7割以上の乗用車がバッテリー式電気自動車 (BEV)、プラグインハイブリッド車 (PHEV)、燃料電池車 (FCEV)化に進む一方で、その他新興国では電力供給体制などの制約に起因し、2割以下に留まるという試算がされています。これは、言い換えると先進国ではBEV等が主流となる一方で、途上国では内燃機関搭載車両が主流であることを示しています。(データ参照元 日経BP「自動車産業2040」)

世界的なカーボンニュートラル(以降CNと略)に向けた機運が高まる中、輸送部門においては、走行中のCO2を含む排出ガスがゼロであるBEVに大きな期待が集まっています。この考え方は、各国の再生可能エネルギーに基づく電力供給を前提とした施策で、欧米中のリードによって進んでおり、内燃機関搭載車規制の考え方にもつながっています。

一方で、社会から求められる内燃機関搭載車両に対しても、待ったなしと言われるCNへの取り組みの手を緩めることはできないと言えます。

このような実態を踏まえ長期視点で今後の自動車用パワートレインを見ると、世界の自動車市場における二酸化炭素排出削減およびCN実現には、内燃機関を含め、様々なパワートレインの技術進化が地域軸、時間軸毎に求め続けられるという複雑な時代になっていると言えます。

AICEのCN技術シナリオ

CN実現に向けたAICEの技術シナリオ

図1 内燃機関搭載車両におけるCN実現に向けたAICEの技術シナリオ (ガソリン車の事例)

2020年から、AICEは内燃機関搭載車両でもCN実現は可能であるとの判断のもと、経済産業省や他団体との連携を通し、CN実現に向けたAICEの技術シナリオ(以下「技術シナリオ」と略)を策定※2しました。
※2 ガソリンエンジン乗用車と、ディーゼルエンジン重量車の2種を策定

内燃機関搭載車両の最大の課題は、走行中の燃料の燃焼によって発生するCO2の排出です。AICEでは、このCO2排出量をゼロにするために、様々な内燃機関の技術進化で排出量を抑制することと、CO2吸収除去技術を融合した「CNの考え方」を導入しています。この課題を解決するための4つのステップを技術シナリオとして定義し、それぞれのステップごとに選定した研究アイテムを抽出しました。これらのCO2排出量削減の効果ポテンシャルを見積もるため、技術シナリオの4ステップに対して数値解析を実施、その結果を図1に示します。まず、2015年のガソリン車のWell to Wheel(以下「WtW」と略) CO2排出量を100%とすると、HEV化を含めた①平均熱効率向上で50%以下、最大熱効率向上のための②エンジン熱効率向上策で30%以下のレベルを実現できる可能性があり、更にAI制御や軽量化など、③車両の効率向上を含めると、20%以下まで削減の道筋が見えてきます。これらに加え、CN燃料適用を含む④炭素除去技術によってゼロを、すなわちCNを目指します。
現在、AICEは、この技術シナリオの実現を目指して研究活動を推進しています。

CN実現に向けたAICEの役割

CN実現に向けたAICEの役割

表1 CN実現に向けたAICEの役割

2010年前後の日本では、グローバルな燃費、排気規制強化により内燃機関の開発負荷の増大が大きな課題となっていました。将来への危機感から自動車メーカーが集まり、2014年にAICEを設立しました。AICEでは、欧州の産学連携スタイルを参考にし、日本の特徴を生かした産産学学連携スタイルを開始、内燃機関の高効率化、及びゼロエミッション化を目標に、内燃機関の基礎応用領域の研究を進めてきました。約10年が経過した現在、乗用車のみならず大型車両、農機、建機、サプライヤなど多くの内燃機関技術を有する日本の仲間が参画する団体になりました。また、アカデミアとの関係強化のため、研究パートナーとしてゼロエミッションパワーソース研究コンソーシアムに特別会員として参加しています。
2020年以降、産学連携によるCNの実現をAICEの役割と定義(表1)し、これに沿って活動を進めています。

2023年現在、AICEに集まった仲間と前述のAICEの役割を実現するために、2022年に応募し採択されたNEDOのグリーンイノベーション基金事業1)の推進により、AICEのCN技術シナリオの実現に向けて邁進してまいります。そして、この100年に一度の大変革時代の中で、社会ニーズ、企業ニーズに応えつつ、産と学(研究者、学生)のwinwinの関係を発展させ、日本の将来に繋がる産官学連携のひな型となること目指します。
1) https://green-innovation.nedo.go.jp/project/development-fuel-manufacturing-technology-co2/

自動車用内燃機関技術研究組合 運営委員会
委員長 菊池 隆司

アクセス

〒105-0003 東京都港区西新橋二丁目8番11号 7東洋海事ビル5階

技術研究組合とは

技術研究組合とは、複数の企業や大学・独立行政法人などが共同して試験研究を行うために、技術研究組合法に基づいて、大臣認可により設立される法人です。
自動車用内燃機関技術研究組合は2014年4月に経済産業大臣の認可を受け設立されました。
技術研究組合について詳細はこちらをご参照ください。

自動車用内燃機関技術研究組合
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