コラム記事:株式会社本田技術研究所 九嶋 智
- コラム
2020.03.23
コラム記事:株式会社本田技術研究所 九嶋 智
紹介
氏名 : 九嶋 智
所属 : 株式会社本田技術研究所
産学連携に関する職歴:
2014年~2018年 EGRデポジット抑制技術研究ワーキング(WG)リーダー
コラム
私は AICE発足当初から『EGRデポジット抑制技術研究ワーキング(WG)』のWGリーダーを約5年間勤めさせて頂きました。 その間、WGに参加された方々 及び AICE関係者の方々のご協力により何とかWGリーダーの役割を果たす事ができました、この場を借りて感謝申し上げます。
私は自社にて長年に亘り開発業務をおこなってきましたが、AICEのような技術研究組合への参画は初めての経験であったので、AICE発足当初は 同業他社の技術者が集まって研究を進めるというAICEの活動に対し、研究が上手く進むのか?という不安を抱えながら研究をスタートさせたように記憶しています。
ところが、WG活動を始めて、参加各社の技術者の方々と話をしてみると、皆さん社内でEGRシステムの信頼性に関してデポジットの堆積という同じ苦労をしていて、技術者としての仲間意識が芽生えていったことが想い出されます。
WGでは、企業側が明らかにしたい事を明確にし、産総研の研究者の方々、大学の先生方と研究目標を定め、今まで各社の経験から捉えられていた現象を化学的に解明し、デポジットの生成メカニズムを明らかに出来ましたが個社ではなかなか出来ない現象解明を各社の知見と先生方の専門性を結集出来るAICE活動で進められたことが大きな要因であると考えています。
このような経験は AICE活動に参加しなければなかなか得られることではないと思われるので、若い技術者の方にも参加してもらい体験して頂きたいと感じています。
AICE研究に参加された学生さんにはWG会合での進捗報告や年度末のAICE成果報告会にて、資料を作成して発表し、内容についての質疑に答えるなど、とても良い経験が出来ると考えます。
実際にAICE活動に参加した学生さんからは 『AICEの最終報告会での発表は いろいろな大学のアドバイザーの先生方からの鋭い質問への対応を経験する事が出来たため、その後の学会発表や就職活動での面接などでもあまり緊張せず受け答え出来たと感じている。
また、技術に対する大学と自動車メーカーの取り組み方の違い、例えば 大学では細部に亘り現象解明を重視するが、企業側のニーズは 詳細な現象解明よりも概略が分かれば目標とする期限までに 現場で使える成果を出すことが重要という考え方もあることなど、大学と企業の考え方の違いを知る事が出来て、就職した後に業務を進めるうえで、企業としての考え方が参考になった』 との意見も聞いています。
このように AICE研究に参加することで学生さんにも大学内ではなかなか出来ないようなことを経験出来る良い機会になっているのではないかと思います。
また、研究プロジェクトの途中の2016年度からAICE組合員以外の共同研究企業様にWGに参加頂き、部品メーカーからの視点や分析メーカーの専門性からアドバイスを頂けたこともWG活動の進捗に大きく貢献して頂けたと感じております。
共同研究企業様にはWGに参加頂くことで、排ガス成分からデポジットが生成されるメカニズムが分かるという成果以外にも、『自動車メーカーが何を考えているのか?を直接聞くことが出来る、なかなか話をする機会のない他業種や同業他社の技術者と議論を交わす事で参加メンバーの育成にも繋がる』等、WGへ参加することに対して良かったとのご意見を頂き、懇親会などを含めとても良い雰囲気でWG活動が出来たと感謝しております。
乗用車も電動化の流れが押し寄せ、自動車業界も100年に一度の大変革期と言われていますが内燃機関は この先も使われ続けていく状況の中、内燃機関に求められる性能は 更に高くなっていくと考えられ、そのためにも このような基礎的な現象解明、基礎応用研究は、不可欠であると思います。私も2019年度からは 研究推進委員 及び 凝縮水腐食WG / EGR燃焼室デポWGのメンバーとして引き続きAICE活動に携わらせて頂き、微力ながらAICE活動へ貢献出来ればと思っています。