カーボンニュートラル実現に向けたAICEの役割

世界の動き

2021年10月31日~11月13日、英国グラスゴーで国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が開催されました。2015年のパリ協定では、「産業革命前と比べた世界の平均気温上昇抑制」の目標を2℃未満、1.5℃を努力目標としていましたが、今回のCOP26では、【目標=1.5℃未満】となり、カーボンニュートラル(CN)に向けての動きが鮮明となりました。また、会期中に開催された世界リーダーズサミットにおいて、岸田総理からは、『2050年のCNを実現するため、2030年度の温室効果ガスの排出量を2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%に向けて挑戦する』という目標が示され、日本国内においても、CNへの関心が大いに高まっています。

CN実現に向けたAICEの技術シナリオ

CN実現に向けたAICEの技術シナリオ

図1 内燃機関搭載車両におけるCN実現に向けたAICEの技術シナリオ

世界的なCNに向けた機運が高まる中、輸送部門においては、走行中のCO2を含む排出ガスがゼロである電気自動車(EV)に大きな期待が集まっています。一方、これまで、車のパワーソースとして主役であったエンジンは、欧州での販売禁止の動きなども相まって、「今後、エンジンは生き残れるのか?」という声を耳にする機会が増えています。このエンジンの未来を危ぶむ声は、実は10年以上前から続いており、日本の内燃機関の技術者が減少するという危機感から、自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)は発足しました。
AICEは、発足以来一貫して、内燃機関の高効率、及びゼロエミッション化を目標に、内燃機関の基礎応用領域の研究を進めて参りました。その成果から、内燃機関搭載車両でもCN実現は可能であるとの判断の基、昨年度の日本政府のCN宣言を受けて、経済産業省や他団体との連携を通し、乗用車のみならず大型車両、農機、建機など全ての内燃機関を搭載する日本の輸送部門全体のCN実現に向けたAICEの技術シナリオ(技術シナリオ)を策定しました。
図1に、乗用車の技術シナリオを示します。内燃機関搭載車両の課題は、走行中の燃料の燃焼によって発生する CO2の排出です。AICEでは、このCO2排出量をゼロにするためには、様々な内燃機関の技術進化で排出量を抑制することに加え、CO2吸収、除去技術との融合が不可欠と考えました。そこで、この課題を解決するための4つのステップを技術シナリオとして定義し、それぞれのステップごとに選定した研究アイテムの効果を、数値解析で検証しました。
技術シナリオの4ステップとその CO2排出量削減効果を、図1に沿って説明します(あくまで現段階での試算であり、さらなる削減効果を目指します)。まず、2015年のガソリン車のWell to Wheel(WtW) CO2排出量を100%とすると、HEV化を含めた①平均熱効率向上で50%以下、最大熱効率向上のための②エンジン熱効率向上策で30%以下のレベルを実現できる可能性が示されています。更に、AI制御や軽量化など、③車両の効率向上を含めると、20%以下まで削減可能です。これらに加え、CN燃料適用を含む④炭素除去技術によってゼロを目指します。
現在、この技術シナリオに沿った研究計画を策定し、産学連携による研究を推進しています。

CN実現に向けたAICEの役割

CN実現に向けたAICEの役割

表1 CN実現に向けたAICEの役割

AICEは、内燃機関搭載車両のCN実現に向かってスタートを切りました。大きな挑戦ではありますが、AICEが目指す2050年の社会は、日本政府のグリーン成長戦略と一致しており、日本の輸送部門全体がCN社会にスムーズに移行できるよう、産学連携による研究を加速していきたいと考えています。
CN実現に向けたAICEの役割を表1に示します。これまでと同様の理念とミッションのもと、AICEの果たす三つの役割を新たに定義しました。
まず、日本の輸送部門全体がCN社会にスムーズに移行できるよう、技術的な可能性を追求する研究推進体制を目指します。そして、内燃機関搭載車両の究極の目標であるCNの実現に向けて、他業界との連携も含め、技術シナリオに沿った基礎応用領域の研究をリードしていきます。さらに、理念に基づき、未来を創る研究を推進できる人材の育成を促進します。
このように、AICEは、ゼロエミッション社会の実現に向けて、産官学連携によるオープンイノベーションを積極的に推進しながら、これまでの研究分野における技術革新、更に他業界との連携による新たな研究を積極的に行い、ゼロエミッション社会の実現に向けて邁進してまいります。そして、日本の産業界及び大学がこの100年に一度の大変革時代を乗り切り、将来の持続的な発展を実現することに貢献していきます。

自動車用内燃機関技術研究組合 運営委員会
委員長 木村 修二