HINOCA

HINOCA エンジン3次元燃焼解析ソフトウェア

ABOUTHINOCAとは

HINOCAは、SIP「革新的燃焼技術」(※)から生まれ、AICEが発展させてきた自動車用エンジン燃焼を主たる対象とした3次元エンジン燃焼解析ソフトウェアの名称です。
HINOCAは、移動境界を取り扱える圧縮性流体解析ソルバに、SIP「革新的燃焼技術」において国内の大学や研究機関で開発したエンジン燃焼計算に必要なサブモデル群を搭載することで、自動車用エンジン燃焼計算を可能とした国産の自動車用燃焼解析ソフトウェアです。

※SIPとは、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーション実現のために創設された国家プロジェクトです。
関連リンク
内閣府ホームページ
国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)ホームページ

01
エンジン筒内流動や燃焼の可視化

HINOCAは、ピストンやバルブなどの移動境界を取り扱える圧縮性流体解析ソルバに、噴霧、点火、火炎伝播、壁面熱流束などの自動車用エンジン燃焼計算に必要なサブモデル群を搭載しています。吸気ポート設計の検討やエンジン燃焼のサイクル変動の抑制検討など、HINOCAによる3Dシミュレーションを活用することで、効率的なMBDを実現することができます。

燃焼計算のサイクル変動計算

02
大規模な並列計算に対応

提供:理化学研究所

HINOCAは、並列化効率に優れたソフトウェアです。
MPI+OpenMPによるハイブリッド並列が施されており、高い並列化効率を誇ります。 各企業様でお持ちの大規模計算機のほか、 「富岳」での計算も可能です。「富岳」での大規模計算については、実際に2021年度以降、 "富岳利用研究課題" に採択されており、その研究成果を公表しています。

03
最新研究を反映したソルバ

HINOCAの圧縮性流体解析ソルバおよびエンジン燃焼計算に不可欠なサブモデル群は、 産学官連携のもと、常に最新の研究成果が反映されたモデルにアップデートされる体制のもと運用されています。
計算速度は年々向上しており、市販ソフトに近いレベルの計算時間を実現しています。 また、GUIも用意することで、計算設定等を容易に行えます。

ソルバモデル
定常流グラフ

04
HINOCAの多彩なサブモデル

HINOCAに搭載されているサブモデルを示します。

定常流グラフ
もっと詳しく見る

HINOCAでの計算事例

HINOCAの各サブモデルはオリジナルコードのため、目的に応じて柔軟に変更することが可能です。
以下に、HINOCAの柔軟性を活かした検証計算の例を示します。

  • 【ガソリン噴霧シミュレーション】

    〇検証内容
    実験とHINOCAのガソリン噴霧計算結果について、ペネトレーションと噴霧外形を比較し、HINOCAで実験の噴霧挙動を再現できるか確認した。また、メッシュサイズ(Δx)、噴霧モデル(KH-RTモデル)パラメータ感度を調査した。さらに、ポート噴射を想定した横風による噴霧広がりについても計算で予測した。

    ▶実験とHINOCA計算の噴霧ペネトレーションの比較

    実験とHINOCA計算で
    噴霧ペネトレーションと

    外形がよく一致

    ▶実験とHINOCA計算の噴霧ペネトレーションの比較

    メッシュサイズや
    分裂パラメータが
    噴霧に及ぼす影響を把握

    ▶横風による噴霧広がりの比較

    ポート噴射を想定した
    横風による噴霧広がり

    の比較

    まとめ HINOCAで、LESを使いメッシサイズを小さくすると、噴霧周りの細かい渦が解像でき、噴霧の広がりやペネトレーションを予測できることが確認できた。
    → ガソリンエンジンの燃焼計算において、HINOCAでは噴霧を正確に表現した燃焼計算が可能といえる。
    また、LESを用いた場合には、噴霧間バラツキの評価も可能である。

  • 【ディーゼル噴霧シミュレーション】

    〇検証内容
    実験とHINOCAのディーゼル噴霧計算結果について、ペネトレーションと噴霧外形を比較し、HINOCAで実験の噴霧挙動を再現できるか確認した。高圧噴射となるディーゼル噴霧計算では要求されるメッシュサイズも小さくなることが想定され、最適なメッシュサイズの検討も実施した。

    ▶メッシュサイズ違いのディーゼル噴霧計算結果

    まとめ ノズル近傍のメッシュサイズを細くする(0.0625 mm)ことで、精度の高い結果が得られることを確認した。
    → ガソリン噴霧に加え、ディーゼル噴霧についても噴霧の広がりやペネトレーションが予測できるようになり、燃焼室の仕様検討など具体的な開発を見据えた計算が可能といえる。

  • 【ポート定常流のシミュレーション】

    〇検証内容
    実験とHINOCA定常流計算結果について、シリンダ断面の流速分布を比較し、HINOCAで実験結果を再現できるか確認した。また、これを評価するために必要なメッシュサイズを検証した。エンジン開発では、バルブ部の流量係数を評価するため、ポート形状によるシリンダ断面(図の紫線部分)流速を計算で予測できることは開発工数削減の観点から有効である。

    ▶実験とHINOCA計算の断面流速の比較(メッシュサイズ違い)

    まとめ LESを使いメッシュを細かくすると、流れの剥離や再付着を正確に計算することができ、流動を正確に表現できるようになった。
    → タンブル強化ポートのような新たなコンセプトのポートの仕様検討に活用できる可能性が示された。
    ただし、計算時間には課題があるため、計算時間の短縮に向けた検討に取り組んでいる。

  • 【多サイクルエンジン燃焼計算】@富岳

    〇検証内容
    HINOCAで多サイクルエンジン燃焼計算を行い、実験の平均的な燃焼特性のみならず、サイクル変動も表現可能か検証した。サイクル変動の要因を計算により明確にすることで、さらなる低CO2化を実現できる可能性がある。なお、計算にあたっては富岳の豊富な計算リソースを活用した。

    富岳

    ▶計算条件(低解像度計算と高解像度計算)

    計算条件

    ▶筒内の燃料分布の様子(低解像度計算と高解像度計算の違い)

    筒内の燃料分布の様子

    細かい渦を解像するためには高解像度計算が必要であることが確認された。

    ▶点火タイミング時のプラグ近傍のλの挙動

    点火タイミング時のプラグ近傍のλの挙

    λの変動について,PFI,DIストイキ,DIリーンの順に安定する傾向を計算でも再現。

    まとめ LESによる多サイクル計算により、実機のサイクル変動を表現可能であることが確認された。
    → HINOCA計算により、サイクル変動の要因特定やサイクル変動の改善を実現することで、より一層のCO2低減化を実現できる可能性がある。

  • 【副室燃焼シミュレーション】

    〇検証内容
    熱効率向上を狙ったコンセプトとして副室燃焼を取り上げ、エンジン試験を行う前にHINOCAを用いた予備検討を実施した。

    ▶計算条件等

    エンジン条件
    ✓圧縮 : 13
    ✓燃料 :イソオクタン
    ✓主室A/F : A/F = 35(λ≒2.4)の予混合吸気
    ✓副室A/F : A/F = 20狙いで燃料噴射(-90deg.ATDCで、0.9mgを副室内に噴射)
    ✓点火時期 : -20deg.ATDC(MBTではない)
    ✓NMEP : 10bar狙い(吸排気境界条件で調整)
    設定モデル
    ✓乱流モデル : LES(WALE)
    ✓火炎伝播モデル : G方程式モデル(SL:Gulder、ST:Pitsch)
    ✓壁面熱損失モデル : Han-Reitz
    ✓点火モデル : Lucchini
    ✓噴霧モデル : KH-RT

    ▶副室燃焼計算結果の一例

    まとめ 詳細な化学反応計算を実施することにより、副室燃焼の自着火プロセスを計算することができることが確認できた。
    → 副室燃焼の点火時期や副室の仕様の検討などの机上検討が可能である。

EVENTイベント

HINOCAには直感的操作のしやすいGUIが用意されており、"HINOCA講習会"も定期的に開催されています。

NEWSお知らせ

HINOCAに関する
お問い合わせフォーム
お問い合わせフォーム