AICEとは
理事長挨拶
自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)は2024年4月1日をもちまして、創立10周年を迎えました。AICEの活動が継続できているのは、皆様方の変わらぬご支援とご厚情のおかげで、心より感謝申し上げます。
AICEは2014年4月、欧州の産業競争力の源泉の一つとなっている産学官連携を参考に、共通課題に対して共同で出資して基礎・応用研究を行う「日本国内の産学官連携プラットフォーム」の役割を担って創立されました。同時に、創立に参加した自動車メーカー8社と研究機関1団体※により、永続的な日本の産学官連携を目指す二つの理念(「日本の産業力の永続的な向上に貢献」、「将来に亘り産学官連携を推進するリーダの育成」)が作成されました。
※後に9社と2団体
発足後は、産学官連携により経済産業省の補助事業「クリーンディーゼルエンジン技術の高度化に関する研究開発」や「次世代自動車等の開発加速化に係るシミュレーション基盤構築事業」の実施およびSIP「革新的燃焼技術」の目標達成への協力などで、多くの研究成果を創出すると共に人財育成に貢献してきました。また、共同研究企業として約70社という数多くの企業が加わり、さらにアカデミアによって設立された「ゼロエミッションモビリティパワーソース研究コンソーシアム(ZEMコンソ)」にも参加することでアカデミアの皆様との強い繋がりを作ることもできました。現在、延べ1000名を超える産学の技術者、研究者が参加する活動となり、プラットフォームとしても大きく成長、AICEの二つの理念の実現に一歩近づいたと考えています。
日本政府の2020年10月の2050年カーボンニュートラル(CN)宣言に合わせて、AICEは内燃機関のCN技術シナリオを策定しました。CNの目的はCO2の排出量を実質ゼロに抑えることであり、電気自動車を100%にすることでも、内燃機関車両を廃止することでもありません。各国の経済発展やエネルギー事情の違いを考慮し、幅広く多様な技術を活用する必要があると考えています。2022年に国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募する「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」の「燃料利用技術の向上に係る技術開発(~2027年度終了予定)」にAICEが採択されました。このプロジェクトはCN燃料普及の時代に向けた内燃機関の進化を目的に、ハイブリッド自動車の燃費半減超を目指す非常に高い目標を有しています。現在、AICEは、この目標達成に向けて総力で研究を進めています。
最後に、自動車のCN実現に向けては、様々な技術的選択肢を含めたマルチパスウェイが必要です。そのため、将来のAICEは、「これまで培った産学連携の継続」、「内燃機関に加え、電動車やCN技術に至るテーマの拡大」、「従来の基礎応用研究に加え、より製品化に繋がる成果」等、激しく変化する社会動向や産学官の期待値に応えられる姿を目指しています。そして、本組合を支える参加企業にとってAICEへの期待はますます大きなものとなってゆくと考えており、世界をリードする日本の技術力の強化と、次世代をリードする人財の育成、そして日本の産業技術の発展に、皆様と共に貢献して参ります。
自動車用内燃機関技術研究組合 理事長 上原 隆史
カーボンニュートラル実現に向けたAICEの役割
世界の動き
AICEが実施した2022年度動向調査結果※1を読み解くと、2040年にかけて世界の乗用車普及を二分している先進国とその他途上国のパワートレインの地域性の実態が見えてきました。その内容を少しご紹介します。
※1 AICE参加企業に配布される技術動向調査報告書
2040年の社会を想像します。我々が頻繁に目にする「日・米・欧・中」の地域では7割以上の乗用車がバッテリー式電気自動車 (BEV)、プラグインハイブリッド車 (PHEV)、燃料電池車 (FCEV)化に進む一方で、その他新興国では電力供給体制などの制約に起因し、2割以下に留まるという試算がされています。これは、言い換えると先進国ではBEV等が主流となる一方で、途上国では内燃機関搭載車両が主流であることを示しています。(データ参照元 日経BP「自動車産業2040」)
世界的なカーボンニュートラル(以降CNと略)に向けた機運が高まる中、輸送部門においては、走行中のCO2を含む排出ガスがゼロであるBEVに大きな期待が集まっています。この考え方は、各国の再生可能エネルギーに基づく電力供給を前提とした施策で、欧米中のリードによって進んでおり、内燃機関搭載車規制の考え方にもつながっています。
一方で、社会から求められる内燃機関搭載車両に対しても、待ったなしと言われるCNへの取り組みの手を緩めることはできないと言えます。
このような実態を踏まえ長期視点で今後の自動車用パワートレインを見ると、世界の自動車市場におけるCO2排出削減およびCN実現には、内燃機関を含め、様々なパワートレインの技術進化が地域軸、時間軸毎に求め続けられるという複雑な時代になっていると言えます。
AICEのCN技術シナリオ
図1 内燃機関搭載車両におけるCN実現に向けたAICEの技術シナリオ (ガソリン車の事例)
2020年から、AICEは内燃機関搭載車両でもCN実現は可能であるとの判断のもと、経済産業省や他団体との連携を通し、CN実現に向けたAICEの技術シナリオ(以下「技術シナリオ」と略)を策定※2しました。
※2 ガソリンエンジン乗用車と、ディーゼルエンジン重量車の2種を策定
内燃機関搭載車両の最大の課題は、走行中の燃料の燃焼によって発生するCO2の排出です。AICEでは、このCO2排出量をゼロにするために、様々な内燃機関の技術進化で排出量を抑制することと、CO2吸収除去技術を融合した「CNの考え方」を導入しています。この課題を解決するための4つのステップを技術シナリオとして定義し、それぞれのステップごとに選定した研究アイテムを抽出しました。これらのCO2排出量削減の効果ポテンシャルを見積もるため、技術シナリオの4ステップに対して数値解析を実施、その結果を図1に示します。まず、2015年のガソリン車のWell to Wheel(以下「WtW」と略) CO2排出量を100%とすると、HEV化を含めた①平均熱効率向上で50%以下、最大熱効率向上のための②エンジン熱効率向上策で30%以下のレベルを実現できる可能性があり、更にAI制御や軽量化など、③車両の効率向上を含めると、20%以下まで削減の道筋が見えてきます。これらに加え、CN燃料適用を含む④炭素除去技術によってゼロを、すなわちCNを目指します。
現在、AICEは、この技術シナリオの実現を目指して研究活動を推進しています。
CN実現に向けたAICEの役割
表1 CN実現に向けたAICEの役割
2010年前後の日本では、グローバルな燃費、排気規制強化により内燃機関の開発負荷の増大が大きな課題となっていました。将来への危機感から自動車メーカーが集まり、2014年にAICEを設立しました。AICEでは、欧州の産学連携スタイルを参考にし、日本の特徴を生かした産産学学連携スタイルを開始、内燃機関の高効率化、及びゼロエミッション化を目標に、内燃機関の基礎応用領域の研究を進めてきました。約10年が経過した現在、乗用車のみならず大型車両、農機、建機、サプライヤなど多くの内燃機関技術を有する日本の仲間が参画する団体になりました。また、アカデミアとの関係強化のため、研究パートナーとしてゼロエミッションパワーソース研究コンソーシアムに特別会員として参加しています。
2020年以降、産学連携によるCNの実現をAICEの役割と定義(表1)し、これに沿って活動を進めています。
2023年現在、AICEに集まった仲間と前述のAICEの役割を実現するために、2022年に応募し採択されたNEDOのグリーンイノベーション基金事業の推進により、AICEのCN技術シナリオの実現に向けて邁進してまいります。そして、この100年に一度の大変革時代の中で、社会ニーズ、企業ニーズに応えつつ、産と学(研究者、学生)のwinwinの関係を発展させ、日本の将来に繋がる産官学連携のひな型となること目指します。
委員長 菊池 隆司
理念
- 産学官の英知を結集し、将来に亘り有望な動力源の1つである内燃機関の基盤技術を強化し、世界をリードする日本の産業力の永続的な向上に貢献する。
- 産学官の相互啓発による研究推進により、日本の内燃機関に関する専門技術力の向上を図り、技術者 および将来に亘り産学官連携を推進するリーダーを育成する。
スローガン
移動の自由と地球の未来を約束する、
究極の内燃機関の共同研究
AICEの目指す将来像
~「移動の自由」と「地球の未来」を約束するために~
カーボンニュートラル(CN)社会の実現に向け、世界中でパワートレインの電動化が加速する中、AICEは「内燃機関技術の進化による持続可能なモビリティ社会の構築」に取り組んでいます。私たちは、バッテリー式電気自動車(BEV)との共存を前提としつつ、内燃機関(ICE)にも今後の社会における明確な役割と価値があると確信しています。
移動の自由を
守る力としてのICE
1. 移動の自由を守るICE
人々が「いつでも」「どこでも」「どこまでも」「好きな時に」「好きな場所に」「廉価に」「安全に」「安心して」移動できる社会――これは、人類共通の願いであり、モビリティが果たすべき普遍的な役割です。AICEは、液体燃料の高いエネルギー密度、備蓄性、既存インフラとの親和性を活かし、あらゆる地域や環境下で“移動の自由”を支えるパワーソースとして、ICEは今後も必要不可欠であると考えています。
下図に、AICEが考えるクルマの魅力価値について、欧州市場のデータを基に、ICE、HEV、BEV(普通充電)、BEV(急速充電)の評価をしました。
魅力価値が最も高いパワーソースを5点と設定して、それ以外のパワーソースの評点を相対比較し示します。これらの図から分かる通り、ICEは航続距離・燃料コスト・燃料安定供給性の観点で、依然として高い優位性を持っています。AICEでは、この強みをより進化させ、BEVとは異なる価値で「豊かで持続可能な移動社会」を支えることを目指します。
-
パワーソースごとの現在の魅力価値の比較
(BEVが普及している欧州市場データの分析より)
Source : https://www.adac.de/
-
パワーソースごとの「エネルギーコスト」と「航続距離」の比較
23-25CY model M-SUV
Source :
Gasoline 95RON :
1.39€/L
Diesel :
1.3€/L
Electric DC :
0.61€/kWh
AC :
0.32€/kWh
地球の未来への貢献
2. 地球の未来への貢献
地球規模での温暖化対策において、LCA(ライフサイクルアセスメント)視点のCO₂削減が重要となっています。AICEは、ICEの更なる効率向上とCN燃料(合成燃料、バイオ燃料、水素など)の活用により、ICE搭載車でもLCA全体でのCNを実現できる可能性があることを示してきました(CN実現のためのAICE技術シナリオ)。将来の電力供給が不安定または地球温暖化対策が十分でない地域でも、CN燃料と高効率ICEの組み合わせは、確実かつ即効性のあるCO₂削減手段となり得ます。AICEは、エネルギーの多様化や地域格差に柔軟に対応しながら、地球の未来を守る手段としてICEを磨き続けます。
産学官連携による
共同研究のプラットフォーム
3. 産学官連携による共同研究のプラットフォーム
AICEの強みは、産業界・学術界・行政が連携して課題解決に挑む「オープンイノベーション型プラットフォーム」です。
将来は分野を超えて産産・学学の広域連携を官が一括支援する体制を見据え、研究開発のみならず人材育成や地域振興にも貢献する存在を目指しています。このような共同研究体制は、社会的な正統性・透明性を伴いながら、単独では成し得ない革新を加速させる鍵となります。
将来 20XX年
究極の内燃機関を
目指して
4. 究極の内燃機関を目指して
私たちは2050年の社会・環境要件に適合した「究極の内燃機関」を構想し、その実現に向けた研究開発に挑戦しています。これは単なる効率の追求ではなく、誰にも文句を言わせない――つまり「社会に受容され、持続的に必要とされるICE」を目指す取り組みです。BEVやFCVなど様々なパワートレインと共存しつつ、ICEはなおも進化しうる――AICEはその進化の旗手として、内燃機関の未来を切り拓いていきます。
組合概要
| 名称 | 自動車用内燃機関技術研究組合 The Research Association of Automotive Internal Combustion Engines 略称:AICE(アイス) |
|---|---|
| 住所 | 〒105-0003 東京都港区西新橋二丁目8番11号 7東洋海事ビル5階 |
| 設立年月日 | 平成26年4月1日 |
| 理事長 | 上原 隆史(トヨタ自動車株式会社 パワートレーンカンパニー プレジデント) |
| 組合員 |
いすゞ自動車株式会社、スズキ株式会社、株式会社SUBARU、ダイハツ工業株式会社、トヨタ自動車株式会社、日産自動車株式会社、本田技研工業株式会社、マツダ株式会社、三菱自動車工業株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所、一般財団法人日本自動車研究所 (9企業2団体) |
| 従業員数 | 16名 |
| 事業の概要 | 内燃機関の性能向上技術の基礎・応用研究 |
| 主な事業 |
AICEは、研究事業、MBD事業、ベンチマーク事業、調査事業の4つの事業を進めています。 設立時から、2つの理念を追求し、内燃機関関連企業のニーズや課題を、官の支援も受け学に研究していただいています。 |
役員一覧
| 役 職 | 氏 名 | 所属先及び役職 |
|---|---|---|
| 理事長 | 上原 隆史 | トヨタ自動車株式会社 パワートレーンカンパニー プレジデント |
| 専務理事 | 土屋 賢次 | 一般財団法人日本自動車研究所 業務執行理事 |
| 理事 | 飯田 訓正 | 学校法人慶應義塾 名誉教授 |
| 理事 | 生浪島 俊一 | 日産自動車株式会社 常務執行役員 パワートレイン & EV技術開発本部担当 |
| 理事 | 尾家 直樹 | 本田技研工業株式会社 四輪開発本部 四輪開発戦略部 部長 |
| 理事 | 人見 光夫 | マツダ株式会社 シニアイノベーションフェロー |
| 監事 | 緒方 廣己 |
※2025年6月23日現在
組織図

アクセス
-
-
新橋事務所
〒105-0003
東京都港区西新橋二丁目8番11号 7東洋海事ビル5階 -
鴨居分室(株式会社小野測器 横浜テクニカルセンター内)
〒226-0006
神奈川県横浜市緑区白山一丁目16番1号 -
つくば苅間分室(一般財団法人日本自動車研究所内)
〒305-0822
茨城県つくば市苅間2530番地 -
つくば東分室(国立研究開発法人産業技術総合研究所内)
〒305-8564
茨城県つくば市並木1丁目2番地1
